トップページ > 看護介護全国ニュース(BERITA PERAWATAN) > 2013年8月 第152号

ヘッドライン ... このニュース記事は、EPA(経済連携協定)及び、外国人看護師・介護福祉士に関する全国ニュースをダイジェストでまとめたものです。

日本で看護師不足が深刻…中国人看護師が急増=中国報道(2013/7/29 共同)

少子高齢化が進むにつれ、日本で看護師不足が深刻になってきた。不足を補うため、すでにインドネシアやフィリピン両国からの外国人看護師受け入れで合意しているが、言葉の問題から、非漢字圏の国の人びとが日本の看護師試験に合格するのは簡単ではない。中国網日本語版(チャイナネット)によれば、中国籍の看護師にとっては同じ漢字圏にあることがメリットとなり、日本人と合格率はだいたい同じだという。

経済連携協定(EPA)に基づき、日本は2008年と09年にインドネシアとフィリピンの看護師を受け入れ、それぞれ来日研修を行った。しかし、研修を受けた両国の看護師のほとんどが日本の国家試験に合格していない。現在までに600名以上が来日しているが、資格を取得したのは96名にとどまる。厚生労働省が3月25日に発表した12年看護師国家試験の結果によると、EPAに基づき来日した311名のフィリピン、インドネシア両国の受験者のうち、合格者は30名で、合格率はわずか9.6%だった。

合格率が低い原因はやはり言語の壁だ。とりわけ漢字が最大の難関で、たとえば「褥瘡(じょくそう)」や「誤嚥(ごえん)」などは、非漢字圏の外国人にとっては難しすぎる。日本政府は試験難度を下げたり、試験時間を延長したり、漢字にふりがなを付けたりといった優遇措置を採ってきたが、目立った効果は出ていない。

インドネシアやフィリピンに比べ、中国人の資格取得率は突出している。朝日新聞が行った簡単な調査によると、13年春までに少なくとも217名のインドネシアとフィリピン以外の外国人が日本の看護師試験に合格し、日本の民間病院で仕事をしている。そのうち、中国人が183名で84.3%を占める。ほかはベトナム人30名、韓国人4名だ。

厚生労働省は、超高齢社会になる2025年に看護師の不足は90万人を超えると予測する。外国人看護師の受け入れは必然の流れといえそうだ。

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特別インタビュー 柴田雅代(一般社団法人外国人看護師・介護福祉士支援協議会理事、公益社団法人日本・インドネシア経済協力事業協会理事長) 医療・介護の人材不足の解消が期待される 外国人看護師・介護福祉士のさらなる展開のためには事業の民活化や受け入れシステムの見直しが急務(ばんぶう 7月号 VOL.388)

医療・介護の人材不足を補う目的で2008年からスタートした外国人看護師・介護福祉士候補者の受け入れ。国家試験の合格率は徐々に高まっているが、人材難解消には程遠い。5年が経過した今、何を見直すべきか。一般社団法人外国人看護師・介護福祉士支援協議会の柴田雅代理事に聞いた。

<インドネシアとフィリピン合わせて 1562人の候補生が来日>

−−社会保障と税一体改革でも示されているように、超高齢社会の進展に伴って、医療・介護人材の必要量はこれまでよりも増大します。しかし、出生率は依然として低いままのため、どうしても外からの労働力確保、すなわち外国人の受け入れが避けられません。こうした状況を受け、2008年からインドネシアやフィリピンとの経済連携協定(EPA)に基づいた外国人看護師・介護福祉士候補者の受け入れがスタートしました。まず、現在までの受け入れの状況について教えてください。

柴田 日・インドネシア経済連携協定に基づき08年度から、日・フィリピン経済連携協定に基づき09年度から、年度ごとに外国人看護師・介護福祉士候補者の受け入れが実施されてきました。これまでに、インドネシアは892人(看護師392人、介護福祉士500人)、フィリピンは670人(看護師237人、介護福祉士就労コース396人、同就学コース37人)、両国合わせて累計1562人が候補者として入国してきました(図1、2)。また、現在はベトナムからの候補者受け入れに向けた調整が行われているところです。当初課題となっていた国家試験の合格率に関しては、図3、4のとおりの結果となっています。日本語教育の充実や彼らに配慮した国家試験の実施により、まだ高い割合とはいえないものの、徐々に状況は改善しつつあるのではないかと思います。

一方、受け入れる側の病院や介護施設にとっても当初は戸惑いがあったと思いますが、開始から5年が経過し、特に継続して受け入れているところではかなり慣れてこられていると感じています。ただし、課題がないわけではありません。

病院の場合、日本語を勉強する時間は比較的多く設けていただいている半面、看護助手といった立場で現場での経験を積ませてもらう時間が少ないという問題が起こっています。人の命にかかわる現場ですから、病院の方が慎重になさざるを得ない気持ちはよくわかるのですが、現場で日本の医療に接する機会は非常に大切ですし、候補者のスキルアップとモチベーションの向上にもつながると思います。また、こういった状態が続くと、実際に看護師の国家試験に合格した後に、「現場経験もあるはずなのに新卒と同じ」といったマイナスの評価を得る可能性があります。特にインドネシアからの候補者は看護師の資格をもっていますので、そういった評価が彼らのプライドを傷つけ、モチベーションを大きく低下させてしまうことも考えられます。外国人看護師を早期に病院の戦力にするという観点からも、なるべく現場で経験を積ませるよう、工夫が必要だと思います。

ご心配の日本語に関しては、確かに初年度は準備期間も短く、話せない・理解できない候補者が少なくなかったのですが、現在は国際交流基金などを中心に1年間の日本語研修が実施されており、回を重ねるごとによくなっています。文化などについても同時に学んでいますので、安心いただければと思います。

他方、介護施設では、彼らを積極的に現場に出し、多くの仕事を任せています。介護福祉士の試験を受けるには3年間の実務経験が必要ですので、ある意味では当然のことだと思います。しかし、「まだ試験まで時間がある」と認識されてしまいがちで試験が近づいてきても勉強の時間がなく、候補者たちは、勤務終了後に睡眠時間を削って国家試験の勉強をしなければならないケースもあると聞いています。それでは候補生の疲弊につながるばかりか、事故やトラブルを招く危険性もあると思います。

候補生たちが看護師と介護福祉士どちらのコースを選ぶかによって、日本での生活や得られる経験に大きな差が出てしまうとしたらそれは問題ではないでしょうか。現場でどのような経験をさせるかは各施設の裁量の範囲だとは思いますが、ある程度の基準があってもとよいのではないかと感じています。

<開始から5年で求められる事業の民活化>

−−受け入れ側の課題についてはよくわかりました。候補者側、あるいは制度の問題として、せっかくある程度の期間受け入れを行っても、資格取得後やあるいは途中で帰国してしまうケースがあると聞きます。国は昨年度の予算で80億円をこの外国人看護師・介護福祉士の受け入れに使っていることもあり、受け入れの仕組みの問題を指摘する声もありますが、それについてはどのようにお考えでしょうか。

柴田 まず前提として、より多くの医療・介護の人材が必要な日本と、働く場を求めている候補者の利害は一致しているということです。インドネシアについていえば、毎年3万人の新たな看護師が生まれていますが、このうち看護師の資格を活かして就職ができるのは40%の1万2000人にとどまっていて、その他の6割の人はまったく別の仕事をするか、他国でベビーシッターや高所得層の専任の看護人になるという道しかありませんでした。しかし、他の国に行くとしてもその国の看護師資格がなければ医療行為を行うことはできませんので、厳密に言えば看護師として働けるわけではないのです。その点、EPAの仕組みであれば支援を受けながら看護師や介護福祉士の資格取得を目指すことができ、さらに彼らの力を必要とする職場もたくさんあります。ですから、ほとんどの候補者が資格を取得して日本で働くことを考えています。

ただ、指摘されているように帰国者がいることも事実。彼らには彼らの人生がありますし、一概に攻めることは絶対にできません。問題点としては、厚生労働省がEPAによる外国人看護師・介護福祉士候補の受入れ目的を「労働力不足を補うものではない」としている点です。今のやり方では受験対策の負担が本人のみならず、施設側にも重すぎるし、合格後の展望が描けないという欠陥があります。

過去に、こんな事例がありました。

インドネシアからの1期生として入国したある介護福祉士候補者が、現場の仕事に入るようになってから、「毎日こんなにおむつばかり替える仕事はできません」といって帰国したのです。彼女は看護師資格を持っていたのですが、業務についてから初めて介護の仕事を体験し、イメージとの乖離に驚いてしまったのだと思います。医療や介護の仕事というのはある程度の覚悟がなければできるものではありません。そうでなければ患者さんや利用者さん、受け入れてくれている施設の方に迷惑をかけることになってしまうのです。

候補者全員が看護師であるインドネシアですらこのようなケースがあったのですから、今後他の国まで広げていくことを考えると、候補生の覚悟をみるような条件や基準をつくっていくことが必要だと強く感じています。これだけ費用をかけているのに帰国している人がいるという事象だけで怒りをもつよりも、今後のよりよい仕組みづくりにつなげていくことが私たちには求められていると思います。

このほかにも、見直すべき点がEPAにはあると思います。たとえば現状では日本語研修は、候補者に対して訪日前の6カ月間と訪日後の6カ月間の合計1年にわたり国際交流基金と海外産業人材育成協会が実施して検定試験などを行っています。当協議会では、EPA応募以前の教育支援として看護学校卒業者対象の日本語集中教育を実施してきました。これは、多くの候補者が日本語を勉強し、実務を覚え、試験対策を行うという負担の大きい候補者たちの声に基づいてはじまった事業で、ジャカルタにて合宿形式で集中的に日本語教育を行うというものです。日本人教師と寝食をともにすることで文化やマナーについても学ぶことができる内容となっています。

EPAに応募する前からこのような教育を行っていれば、受け入れる病院や介護施設は安心して現場にでてもらうことができますし、候補者たちは実務や国家試験対策に専念しより有効に日本での時間を使うことができます。そして、コスト面からも当事業は受け入れ人数が20人と規模は大きくありませんが、現行の仕組みよりもはるかに安価に日本語教育を施すことが可能です。

最初の受け入れから5年が経過し、候補者の総数も増えるなかで、最初の仕組みを堅持していくことはだんだんと難しくなってきます。EPAの問題点が明らかになってきた今日、税金の無駄遣いとならないよう、民営化の道筋をつける時期がきていると思います。

<教育支援や相談業務を展開 候補者の生活や精神面をサポート>

−−外国人看護師・介護福祉士支援協議会では、候補者を支援すべく日本語能力の向上のための各種教育や、受け入れ施設からの各種相談業務などを展開されています。先ほどの看護学校卒業者対象の日本語集中教育以外に取り組まれている事業にはどんなものがありますか。

柴田 EPA応募以前の教育支援としては、現地看護学校での日本語教育を実施しています。現在4校で展開しており、在学中から日本語教育を行うことで日本への関心を高めることに効果を発揮しています。このほか、受け入れ後の各種サポートとして各施設への日本語教師の派遣も行っています。個別対応で日常生活に必要な日本語が問題なく使えるように支援を行うほか、候補者の日常生活の悩みや心情の変化などにも目を配り、日本での生活をサポートしています。

さらに最近行っているのが、准看護師試験の受験サポートとその後の手続きです。実は最近わかったのですが、入管法で准看護師資格を持つ外国人は4年間の滞在資格を有しています。つまり、EPAの期間中に看護師国家試験に合格しなかった候補生はこれまでは帰国するしかありませんでしたが、准看護師試験を受けて合格すればさらに4年間日本に残って看護師を目指すことができるのです。この仕組みが確立すれば、なるべく長く働いてもらいたい病院にも、日本に残って看護師を目指したい候補者にもプラスになることは間違いありません。まだあまり知られていないのですが、前回の准看護師試験は140人が受験し、うち57人が合格しました。候補者のサポートを通じてより多くの人材が日本に残れる仕組みづくりに貢献できればと考えています。

<診療所のような地域医療の現場こそ 外国人看護師が活躍できる>

−−最後に、読者である開業医に向けてメッセージをお願いします。

柴田 ご存知の方も多いかもしれませんが、診療所は外国人看護師の受け入れが認められていません。規模の小さな医療機関には受け入れが難しいという判断からこのように定められているのかもしれませんが、私自身はすごく違和感を持っています。

というのも、私たち日本人の多くはふつう、風邪や少し具合が悪くなったとき、近所にある診療所を受診します。全国各地に10万以上の診療所がありますが、そういう地域医療の現場にこそ、彼らの活躍できる場があるのではないかと思うのです。

また、実際に看護師の応募がなかったり、なかなか定着せずに悩んでいる診療所の院長も多いと聞きます。看護師の人材難は病院も診療所も同じなのに、なぜ診療所だけEPAをとれないのか。彼らの持つやさしさや親切心は患者さんにとって本当の意味での質の高いサービスを実現することができますし、明るさと新興国出身ならではの一生懸命さは、まわりの職員に対していい影響を与えると考えます。

ぜひ診療所の先生方には外国人看護師候補生たちをなぜ自院では受け入れることができないのか問題意識を持っていただき、さらに受け入れ可能となるような行動を起こしていただければと感じています。

<プロフィール>

大学卒業後、約8年間のTV制作会社勤務を経て、インドネシア・バリ島で日本のアニメーション制作会社を設立。約150人のインドネシア人スタッフとともに16年間、インドネシアでは初めてのアニメーション制作に携わった経験をもつ。この経験が買われて社団法人日本・インドネシア経済協力事業協会監査役に就任。2009年5月から現職。

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