トップページ > 看護介護全国ニュース(BERITA PERAWATAN) > 2012年10月 第142号

ヘッドライン ... このニュース記事は、EPA(経済連携協定)及び、外国人看護師・介護福祉士に関する全国ニュースをダイジェストでまとめたものです。

EPA来日の看護師候補支援(2012/9/27 毎日新聞)

広島県は、インドネシアとフィリピンから来日し、県内で働きながら資格取得を目指す看護師の候補者を支援する。27日から模擬試験をするなどして国家試験に向けた学習をサポートする。中国地方5県で初の取り組み。

経済連携協定(EPA)で来日し、福山、尾道、大竹市の3病院に勤務する5人が対象になる。来年2月の国家試験に向け、12月まで計8回、県立三次看護専門学校(三次市)で基礎看護学や老年看護学など科目ごとの模擬試験を実施。その結果を基に同校の教員が個人ごとに弱点を分析し、指導していく。

EPAでの候補者受け入れが始まった2008年度以降、国家試験に合格したのは全国で計66人。合格率は5・7%にとどまる。日本語の壁は厚く、約9割で推移する日本人を含めた全体の合格率を大きく下回る。

県内では11人を受け入れたが、10年度に1人が合格しただけ。5人は3年間の在留期間の満了や家庭の事情で帰国しており、残る5人が来年の受験を目指している。

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「一人前」へ正念場 〈根付くか外国人介護士〉上(2012/7/12 朝日新聞)

インドネシアとフィリピンから来日した介護福祉士の研修生36人がこの春、国家試験に初めて合格し、各地で新たなスタートを切った。人手不足の介護施設で、どんな役割を果たせるのか。外国人の受け入れを定着させるための課題は――。介護の現場や周辺から、2回にわたって探る。

〈方言マスター、次は夜勤記録〉

岐阜市の特別養護老人ホーム「サンライフ彦坂」。この春介護福祉士になったアスリ・フジアンティ・サエランさん(26)は、体が不自由な杉本はつえさん(82)を手際よくベッドから車いすに移し、食堂へ連れて行った。「手の力、ついてきたやろ」。アスリさんの手をぎゅっと握る杉本さん。アスリさんもなめらかな日本語で応じた。「ほんまやね。私の指、痛いくらい。がんばってリハビリしましょうね」

アスリさんがインドネシアからやって来たのは2009年。母国の看護大学を卒業してすぐ、日本との経済連携協定(EPA)に基づく介護福祉士の研修生になった。

「福祉先進国の日本で介護を学び、将来、母国で技術や制度を教えたい」。そんな夢を抱いて海を渡った。

合格までに一番苦労したのは日本語だ。「あいうえお」の読みから始め、漢字は小学校の参考書で勉強。施設の日本人スタッフと暮らし、言葉や生活習慣を教わった。

現場では「外国人」に戸惑う利用者への接し方に悩むこともあった。体を触ろうとすると顔をそむけられたり、方言を何度も聞き直して怒られたり。粘り強く相手の趣味などを調べて話題にし、方言をノートに書いて覚え、今では冗談を言い合う仲だ。アスリさんが担当した認知症女性の夫、井上永一さん(80)は「初めは岐阜弁が通じるか不安やったが、食事やトイレの介助は日本人と大差なく、安心して世話してもらえる。高齢者が増えて日本人だけではやっていけないご時世ですから」と話す。

一人前になるにはこれからが正念場だ。合格後は見習いではなくなり、責任も重くなる。6月に始めた夜勤では、呼吸や顔色などにきめ細かく目配りし、緊急事態にも対応できる幅広い専門的な判断が求められる。「申し送り用の介護記録をつけ、口頭で報告できるようになることが必要」(介護副主任)という。

コミュニケーションもいっそう求められる。例えば誕生会など行事の計画づくり。認知症の場合、家族と話し合って生活歴をひもとき本人の気持ちを理解する力が必要だ。アスリさんは「機能訓練」について職員同士で話し合う委員会のメンバーにもなった。

介護主任の山内ゆみさんは「彼女の明るさで表情を取り戻した認知症の人もいます。看護知識があるのも強み。本来持つ温かさと相手を専門的な目で見るプロの視点を合わせることが課題ですね」。

〈受け入れ減少、経費がネック〉

今年、介護福祉士試験に合格した人の中で、外国人研修生は0.04%にすぎない。やる気があっても勉強に時間をとれず、涙をのんだ人も少なくない。アスリさんのような合格者は、受け入れ施設から手厚い支援を受けられた一握りの「エリート」なのが実情だ。

こうした施設が研修生を支援するのは、「将来の人材不足をにらんだ先行投資」ととらえているためだ。介護の仕事はきつさや賃金の低さもあり、人手が不足しがち。今後も高齢化で要介護者は増え続け、25年には100万人不足するとの予測もある。

約50の介護施設を運営する健祥会グループ(本部・徳島市)はこれまでに研修生を76人受け入れ、今年は受験した7人のうち4人が合格した。関久代・総務部長は「彼らはリーダーの役割を担っていく人材。幹部候補として経営ノウハウも教え、後輩を指導してもらう」と期待をかける。将来は約1500人いる介護職員のうち外国人を1割ほどにし、外国人スタッフだけの施設づくりも目指したいという。

ただ、育成に熱心な施設は一部で、数も制度開始時より減っている。健祥会の場合、研修生には3年間で1千万円以上の人件費などがかかるが、基本的に介護報酬の算定のもとになる職員に数えられず、施設への補助金も研修生1人当たり年間最大23万5千円にとどまる。千葉県の社会福祉法人「長生共楽園」の林正彦理事長は「研修生を受け入れられるのは、経営規模が大きいところに限られる。施設側への支援の拡充が必要だ」と指摘する。(森本美紀)

〈外国人の介護福祉士〉 日本政府が結んだEPAに基づき08年にインドネシア、09年にはフィリピンからも研修生の受け入れを開始。計約900人が来日した。国家試験を受けるには3年以上の実務経験が必要で、今年初めて95人が受験し、36人が合格した。合格者は日本で就労が認められ、在留資格も更新できる。

介護福祉士は介護に関する専門知識や技能を持ち、現場で指導的な役割を果たすことが多い。資格を持つ人は09年時点で約81万人おり、実際に従事しているのは約46万人。

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「卵」育成に懸命〈根付くか外国人介護士〉下(2012/7/13 朝日新聞)

外国人がプロとして介護を担うには、本人や周りの努力のほか、環境整備も大切だ。研修生を送り出す側や日本政府はどう対応しているのだろう。

〈来日前に習慣学び、意欲養う〉

インドネシアの首都ジャカルタ郊外。民間教育機関「ビマ財団」で昨年末から、21人が日本語の特訓に励んでいる。日本との経済連携協定に基づく介護福祉士の研修生をめざす若者たちだ。「介護専門用語」の授業で、学生たちはたどたどしい日本語でプリントを読み上げる。「入浴介助」「歩行器」などの用語に続き、「利用者さんが自分でできることは手伝いません。自分でできないことはお手伝いします」。日本人講師で理学療法士の山本り花さんは「自立を促すために、とても大事なことですね」と、介護の基本を説明していく。 ビマ財団は研修生の受け入れ制度開始に合わせて、2008年に「日本・インドネシア経済協力事業協会」(東京)が設立。「介護福祉士の卵」を訪日前から支援する。授業料は無料。学生は寮に入り、日本の食材を使った自炊など日本式生活を学びながら教室に通う。

インドネシアでは、高齢の親は子どもが世話をすることが多く、他人を「介護」する発想は一般的ではない。日本の情報を十分得ないまま訪日し、介護施設での研修生活に悩み、挫折する研修生も少なくない。このため財団は、介護の心構えや何のために日本に行くのかという目的意識を植えつけることにも力を注ぐ。黒木義高理事は「日本で現場の研修と試験対策に集中できる力をつけておくねらい。優秀な人材を送り出しても、意欲を失い帰国するのではもったいない」と話す。

これまでに財団で学んだ約70人は、全員が大学や短大で看護を学んだ卒業生だ。その一人、ノフィタさん(22)は「インドネシアで看護師の仕事を見つけるのは難しいし、看護も介護も弱い人を助ける意味では同じ仕事。日本で働いてお金をため、妹の教育費を仕送りしたい」。ラムランさん(21)は、同居していた祖父の世話をした経験から介護に関心を持った。「早く日本で学び、将来は母国に老人ホームをつくりたい」という。

看護学校も、日本の介護に関心を高めている。その一つ、ビンタロ看護学校は今年2月に2年制の介護コースを開設し、12人が学ぶ。この事業を担当する芦田洸(つよし)さんは「介護はインドネシア人が本来持つ優しさを生かせる仕事。日本の人材不足を補うには時間がかかるが、いい人材を養成したい」と話す。

〈日本政府、経済的支援は消極的 〉

一方の日本側にも、今年初めて研修生が介護福祉士の国家試験を受験したのを受け、新しい動きが出ている。

厚生労働省の検討会は6月、来年は試験時間を一般受験者の1.5倍にすることを決めた。今年の試験では、難しい漢字にふりがなをつけるなど配慮したものの、研修生の合格率は約38%で、日本人を含む全体の約64%を大きく下回った。試験のやり方をさらに改善し、「日本語の壁」を下げることをめざす。

ただ、受け入れ関係者の間で要望が強い、施設への経済的支援の拡充には消極的だ。厚労省は、外国人の介護福祉士を養成する政策の目的について、将来の人手不足への対応ではなく、「経済連携協定に基づく交流の一環」との立場。今年の合格者36人のうち7人が帰国を決めたことにも、「日本で働くかは本人次第。施設には残念だが、本人の意思ではやむを得ない」(担当者)と静観の構えだ。

外国人による介護は、定着するだろうか。安里和晃(あさと・わこう)・京都大准教授(移民研究)は「外国人は将来、介護現場に欠かせない人材になる。利用者への接し方やチームワークの見直しなど、職場の活性化にもつながる」と指摘。今のやり方に対しては、「受験対策の負担が本人にも施設にも重すぎ、合格後の展望も描きにくい。資格を取得する前から介護報酬の算定に組み込み、取得後も専門性を高める環境を整えることが必要。労働力不足を補う人材として正当に評価しなければ人材は日本を離れ、受け入れ機関も減り、制度は先細りになりかねない」と警鐘を鳴らす。(森本美紀)

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