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ヘッドライン ... このニュース記事は、EPA(経済連携協定)及び、外国人看護師・介護福祉士に関する全国ニュースをダイジェストでまとめたものです。

外国人介護福祉士67%施設が採用前向き/日大大学院塚田教授ら/調査研究結果まとめ(2009/04/17 シルバー新報)

経済連携協定(EPA)で外国人介護労働者の受け入れが始まったことに関連し、塚田典子日本大学大学院教授らが行った調査研究で、全国の特養ホーム・老健施設・介護療養型の施設長の6割超が受け入れに賛成し、実際に雇用してもいいと考えていることが、このほどまとまった報告書で明らかになった。採用後も日本人職員と同等に能力やキャリアに応じて介護の仕事を任せたいと考えていることも分かり、労働力として前向きに捉えていることがうかがえる。

調査期間となった08年3〜4月は、EPA初となったインドネシア人介護福祉士候補者の入国が決まった時期だが、全国規模で介護施設の経営者と職員を対象に行った意識調査は初めて。2317人の介護保険3施設の施設長と職員に調査票を送り、689人から得た回答を分析した(回収率29.7%)。回答施設の6割を特養ホームが占めている。

離職率は10%未満とそれ以上で6対4。「20%以上」の施設も32%あり、大半が人手確保で課題を抱えているほか、現在雇用している介護職員について「数も質も不満足」と回答した施設が43%に達していることが分かった。

外国人介護福祉士の受け入れへの評価は、「大いに賛成」(12.4%)と「どちらかというと賛成」(50.8%)を合わせると6割以上。実際に採用を考えるかどうかについては「積極的に採用」は12%。「他に選択肢がなければ採用」が55.3%で最も多かったため最優先の選択ではないものの、少なくとも7割近くの施設長は拒否していないと言える結果だ。また、外国人介護士に適切と思う仕事内容も、「日本人と同等の介護を任せる」が9割以上。介護福祉士資格取得後は、認知症ケアや夜間の介護、相談員などを挙げる割合も増えていることから、労働力として前向きに捉えていることもうかがえる。

塚田教授は今後、EPAで実際に受け入れた施設の実態把握なども行う予定。外国人労働者を含む介護現場の雇用管理のあり方について研究を続けていくとしている。

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「日本で看護師」狭き門/フィリピン不満/受け入れ/定員7割以下か(2009/04/28 東京読売新聞 朝刊 7ページ)

日本とフィリピンの経済連携協定(EPA)で、5月に初めて訪日予定のフィリピン人看護師・介護士の派遣者数が、定員の7割以下にとどまる見通しとなった。世界への人材輸出国フィリピンでは、日本側の海外人材受け入れ態勢に不満の声が上がっている。

「自信はあったのに……」。選考に漏れた介護士希望のロナルド・タンニャホラさん(42)はそう言って肩を落とした。マニラでの説明会場で、施設側から事実上の「内定」を得ていたが、正式応募後はなしのつぶて。国内での介護士経験を生かそうと「3年間、日本行きを目標にしてきた」だけに悔しさが募る。

政府間合意で初年度の定員は計450人とされたが、雇用主である日本の施設側では消極姿勢が目立ち、実際の求人数は355人だった。公募開始後わずか3週間で5768人も応募したフィリピン側は、完全に肩すかしを食った。20日現在の内定者数は292人にとどまる。

フィリピンは、英語力を武器に毎年2〜3万人の看護師、介護士を海外に送り出している。「日本の国家試験に合格しなければ帰国」との条件にもかかわらず応募が殺到した理由は、訓練生扱いでも10万円以上の月給がもらえ、比看護師の平均(2万円強)を大きく上回る好条件にあった。

ただ、これが施設側からコスト削減のうまみを奪い、受け入れに二の足を踏ませる形となった。比側には、外国人労働者の受け入れに慎重な日本の姿勢にも不信感が広がる。比看護師協会のテレシタ・バルセロ会長は、「日本側は結局、我々を安い労働力としか見ていない」と批判している。

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ゆうゆうLife//インドネシア人/介護士・看護師/受け入れに消極姿勢 (2009/05/01 産経新聞 東京朝刊 19ページ)

◇半数以上が来日できず/不況で介護職に日本人増加
今年11月に来日するインドネシア人の介護福祉士・看護師候補者を受け入れる介護施設や病院が不足し、候補者の半数以上が来日できない見通しだ。仲介団体は募集を2週間以上も延長する異例の対応をしたが、応募は低調。日本の施設や病院が受け入れに消極的な理由を探った。

「文化が違う外国人が介護現場に入っても、うまくいくか分からない。入所者の家族から心配の声も上がっており、インドネシア人介護士を受け入れるメリットを感じない」東京都内の、ある特別養護老人ホームの関係者はそう語る。

インドネシア人介護福祉士候補生らの受け入れは、日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)に基づき2年目だが、消極的な施設は多い。

受け入れを仲介する国際厚生事業団によると、今年は約800人の受け入れを募集した。しかし、応募は少なく、締め切りを2週間以上も延ばしたが、最終的に手を挙げたのは、施設が78カ所193人、病院が67カ所167人の計360人。募集総数の半数以下に止まった。

一方、インドネシアでは、選考を通過した約960人が5月中ごろの事業団との面接を控えて待機中だ。事業団は締め切り後も、施設などを訪問し、受け入れを打診した。

外国人看護師・介護福祉士の事情に詳しい九州大学大学院医学研究院の平野裕子准教授は、日本側の介護施設や病院が受け入れを敬遠することには、構造的な理由があるという。「一番の理由は高額な費用。渡航手数料や日本語研修代など、施設は1人あたり約60万円を出して受け入れる。しかし、彼らは日本語で行われる介護福祉士や看護師の国家資格に受からなければ、帰国せざるを得ない。コストをかけて育てても、帰国されるリスクがあるのでは、受け入れ数を増やすのは難しい」という。

不況の影響も大きい。厚生労働省は相次ぐ派遣切りの後、介護現場で働いたことがない人にヘルパー2級の資格取得費用を拡充。さらに無資格者を雇った事業所への補助も打ち出している。人手不足に悩む介護現場に、人が戻ってきているようだ。

厚労省によると、ハローワークでの介護職への新規申し込みは今年2月には約2万件と急増。前年同月比で約3割伸びた。

無資格者への助成制度を使い、新たに介護福祉士3人を雇った東京都内の特養関係者は「介護職に応募してくれる人は少しずつ増えており、外国人を雇わなくてもやっていける」と話している。

◇「初期投資かかるが総合的にはメリット」
国は経済的支援を横浜市の新鶴見ホームでは今年1月下旬から、インドネシア人介護福祉士候補生2人を受け入れている。

堀江昭正ホーム所長は「市独自の助成をのぞくと、2人の初期投資に200万円近くかかり、当初は職員がほぼ、つきっきりになるなど、手間もかかった。ただ、総合的には効果のほうが大きいように思う」と前向きだ。「彼女たちは明るく、いつも笑顔で一生懸命。ケアが日常になってしまった職員にも、新たな気づきがあった」

平野准教授は「多大な経済的負担をしてまで応募するのは、国際協力をしようという介護施設や病院などの一部に限られている。今後、多くの施設に広げるなら、候補者が資格を取りやすいように、国は入国前の日本語研修を負担するなどして、受け入れ側にかかる経済的負担を軽減することが必要」と指摘している。

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ケア開国:ポピとエラ・春  ◎上/いるだけで安心感 (2009/05/04 毎日新聞 朝刊 23ページ)

日本とインドネシアとの経済連携協定(EPA)に基づき、初めて受け入れた外国人介護労働者が全国の介護施設で働き始めて3カ月。山梨県甲州市の特別養護老人ホーム「光風園」(熊谷和正理事長、定員52人)で働くポピ・アルフィアトゥロフマーさん(22)とエラ・ジュラエハさん(21)も厳冬に耐え、春を迎えた。「介護」という言葉のない国から、介護福祉士を目指してやって来た女性2人の生活を追った。

◇入浴介助、おむつ交換…「介護」の仕事に最初は戸惑い

4月上旬、光風園から車で10分ほどの観光施設「ぶどうの丘」は桜の盛りだった。眼下には桃の花がじゅうたんのように広がる。

 ♪しらかば〜
     あおぞ〜ら♪

休日の息抜きでやってきたエラさん。絶景を前に思わず口ずさんだのは「北国の春」の一節だった。月2回、音楽療法の先生が光風園を訪れる際に、お年寄りがよく歌うので、いつの間にか覚えたという。

ポピさんとエラさんは昨年8月に来日した。関西空港(大阪)に近い国際交流基金関西センターで半年間の基礎的な研修を終え、光風園に来たのは1月下旬のことだった。将来的に外国人の介護力が必要になると考えている熊谷理事長(61)は、2人の受け入れに積極的だった。当初、職員の質問のほとんどはポピさんが答えていた。 エラさんは、ポピさんに通訳してもらうことが多かったが、4月に入ってからは直接受け答えする場面が増えた。

2人はジャワ島西部、西ジャワ州にあるチルボン大学の出身だ。山々に囲まれた地形は甲府盆地と似ているというが、故郷は雨期と乾期に分かれ、年平均気温が30度近くある。氷点下まで冷え込む日本の寒さはこたえた。「一番つらいのは冬の寒さ」と口をそろえる。

共に高校生のころから看護を志し、ポピさんは4年制、エラさんは3年制のコースを修了した。だが、母国では看護師資格を取得しても就職先は少なく、病院で働けるのは3〜4割。日本で働く道があることを知り、大学修了後に日本語研修を受けて準備をした。「ドラゴンボール」や「ドラえもん」などのアニメを通じ日本に親しみを持っていたため、「遠い国」とは感じなかったという。

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インドネシア語には「看護」「看護師」という言葉はあるが「介護」を表す言葉はない。お年寄りの世話は家族介護が一般的で、介護施設もほとんどない。だから、母国には習慣のない入浴の介助や、おむつ交換は来日後に初めて知った。

「看護は病気の人のお世話。介護は食事介助や入浴、おむつ交換……」。ポピさんはそう語るが、仕事の違いに戸惑うこともあったようだ。

看護師資格を持つ2人には、看護師候補として来日する道もあった。しかし、来日には2年以上の実務経験が必要なため、きらめた。少しでも早く働きたかったからだ。

丹沢睦男・光風園次長(71)は「介護、看護の違いはあまり関係ない。ポピさんとエラさんは、いるだけで人に安心感を与える。それが介護の原点かもしれない」と話す。

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3月末、施設で開かれた100歳の入所者の誕生祝いで、ポピさんは必死に涙をこらえた。「みんなでお祝いして家族みたいだなと思って……」

ポピさんは昨年秋、父(当時66歳)を亡くした。ちょうど研修の真っ最中で、帰国は断念した。研修が遅れ、日本で働けないようになれば祖国で待つ母を幸せにするという夢も遠のいてしまうからだ。大阪の研修時代に手に入れた携帯電話で、家族とメール交換することが心の支えだ。エラさんは、母(45)から携帯メールで写真を送るよう言われているが「太ったので送っていません」と笑った。

介護職を目指して一緒に来日した仲間との連絡も携帯電話が中心だ。大学時代の友人が今年も介護福祉士候補から漏れ来日できなかったことなど生情報が次々に入ってくる。

日本で社会人生活をスタートさせたポピさんとエラさん。働きながら介護福祉士の国家試験合格を目指す2人の挑戦は始まったばかりだ。

■経済連携協定(EPA)
2国間でモノや人の移動を自由化し、経済関係を強めるための協定。日本はインドネシアと07年8月に締結し、08年度からの2年間で1000人の看護師・介護福祉士候補者を受け入れる予定だ。初年度は208人が来日し、現在34都府県の100病院・介護施設で働いている。ただし介護の場合、日本で働き続けるためには4年以内に日本語での介護福祉士国家試験に合格する必要がある。試験の合格率は日本人でも5割前後と厳しいうえに、彼らには受験のチャンスが一度しか与えられておらず、落ちれば帰国するしかない。09年度はインドネシア人約800人にくにくわえ、フィリピンからも500人を受け入れる予定。

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ケア開国:ポピとエラ・春  ◎中/施設にゆとり生まれ (2009/05/05 毎日新聞 朝刊 17ページ)

◇人手増え雰囲気も変化/手書きの日誌、読解に課題
山梨県甲州市の特別養護老人ホーム「光風園」で働き始めたインドネシア人介護福祉士候補者のポピさん(22)とエラさん(21)。ていねいな仕事ぶりと、明るい性格は施設にさまざまな変化をもたらし始めている。

施設の朝は慌ただしい。午前8時半。食事が終わると、職員は手分けしてお年寄りをトイレに誘導したり、ベッドに連れて行く。

光風園は93年に開設された。入所のお年寄りはショートステイ10人を含め全部で62人。00年に介護保険制度が始まってから、年々、重度化が進み、平均要介護度は4に近い。平均年齢は約85歳で、8割以上は女性という。多くは移動に車椅子が欠かせない。

「トイレ行きますか〜」。エラさんがお年寄りに声をかけ、目を泳がせていると、ポピさんが気付いてそばにやってきた。トイレ介助は2人1組。エラさんは相方を探していたのだ。

トイレが終わると、エラさんは職員が詰める介護員室に向かい、机の上の「排泄(はいせつ)チェック表」に介助終了の印を書き入れた。ポピさんは、食器を片付けたり、お年寄りを車椅子からベッドに移す作業を次々にこなしている。2人は3月からローテーションに入り、本格的に仕事を始めた。4月に先輩のマンツーマン指導もなくなり、何をすべきか自分で考えることが増えた。

「家に帰りたい」と繰り返すお年寄りをなだめるなど臨機応変の対応は十分とはいえないが、介護主任の星野淳さん(35)は「看護師出身のせいかのみ込みが早く、仕事ぶりはていねい。技術面はクリアしている」と評価する。

日本語の読み書きはまだまだだ。「排泄」「食事」などの字が読めるため、チェックはこなせるが肝心の介護日誌はほとんど読めないからだ。日誌の内容は、朝礼で口頭でも伝えられるが、ケア前に入所者の状態を把握するのは介護の基本だ。だが、日誌には「尿路感染」「表皮はく離」など専門用語も多い。パソコンの文字に見慣れた2人にとって、崩し字読解は至難の業だ。

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2人が加わることで施設にも変化が起きた。普通、介護施設では入所者3人に対し介護職員1人以上を配置する。光風園は2.4対1と元々手厚いが、それでも忙しかった。人員配置上はカウントされない2人の力が加わったことで、職場に余裕が生まれ、週に何回かレクリエーションの時間もできた。

介護現場の雰囲気も変わりつつある。「国民性かもしれないが、忙しくてもゆったりした気持ちを持つことは大事、ということを教えてもらっているような気がする」とある職員は話す。介護福祉士を目指す2人に触発され、介護福祉士を目指すスタッフも増えてきたという。

入所者にも意外なほどすんなりと受け入れられた。「インドネシアは入浴の習慣はないんだって? でも入浴介助はきちんとやってるよ。資格(介護福祉士)もとらなきゃいけないから大変だね」。ショートステイを利用する女性(72)は2人との会話が楽しみだ。91歳の女性も「日本人も外国人も違わないよ。私は戦時中、中国にいたし、外国にも何度も行っているから」とあっけらかんとしている。施設側には外国人のケアを拒否する入所者もいるのではないかとの不安もあったが、面会の家族も含め苦情はないという。

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「お祈りはいいの?」
夜まで仕事が続くとき、星野さんは2人に尋ねる。ポピさんとエラさんはイスラム教徒。日に5回、決まった時間に10〜15分、お祈りをささげる。昼は施設から近い自宅で、お祈りと食事をすませるが、夕方はお祈りの時間と仕事がかぶることもある。2人は施設の休憩室でお祈りをしたり、自宅に戻る日もあるが、言い出さないこともあるようだ。「気を使っているのかもしれない」と研修責任者の守屋英一さん(39)は気をもむ。

最近、2人を悩ませているのは腰痛だ。「朝、痛くて起きられないことがあった」とポピさん。車椅子からベッドに移す作業などは2人1組でも重労働だ。腰痛は職業病ともいえるが、2人は二言目には「だいじょうぶで〜す」と明るい。言葉にしない、あるいはできない思いをどうくみ取っていくかは、施設に課せられた課題でもある。【有田浩子】

◇人材確保、決め手なく
介護施設で働く場合、通常、何人かの職員が時間をずらして勤務に入り、月何回かは夜勤もある。体調管理が難しく長時間、緊張を強いられるが、過酷な労働の割には他の職種と比べ賃金は安く離職率も高い。介護職を目指す大学・専門学校の定員割れも起き、ここ数年、人材不足が深刻だった。

こうした事態を受け、国は今年4月から介護保険制度が始まって以来、初めて介護報酬を3%アップしたが、これまでの経営赤字の穴埋めなどにあてられ、待遇改善にはつながらないとの見方も根強い。

このため、4月上旬にまとまった国の追加経済対策では、介護職員の待遇改善のため、賃金改善を確約した計画を提出すると1人当たり、月額1万5000円の賃上げ分の交付金を支給することとした。このほか、契約解除などで離職を余儀なくされた非正規労働者を介護分野に誘導するための職業訓練や生活費給付などの支援策も実施されている。

国の試算では、2025年に全国で必要となる介護職員数は、現在の約2倍の255万人に膨らむ。年に7万〜8万人ずつ介護職員を増やしていかねばならない計算だ。追加経済対策のような一時的な対策だけでは、人材の確保に見通しが立ったとはいえない。

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ケア開国:ポピとエラ・春  ◎下/資格取得、まずは日本語 (2009/05/06 毎日新聞 朝刊 20ページ)

◇試験の機会は1回限り/学習環境、施設任せ
インドネシア人の介護福祉士候補者は、働きながら国家資格に合格しなければならない。日本人でも働きながらの資格取得は容易ではないが、山梨県甲州市の特別養護老人ホーム「光風園」のポピさんとエラさんは日本語検定の3級合格を当面の目標に 仕事と勉強の両立に励む。

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「『朝寝坊』。この字はなんと読みますか」。光風園の主任生活相談員で2人の研修を担当する守屋英一さん(39)が尋ねた。

守屋さん「ヒントはこの前、エラさんがした……」

エラさん「あさ、ぼう?」

ポピさん「あさねぼう」

光風園1階の面談室で週1回、午後6時から勉強会が開かれる。市販のテキストのコピーを渡し、読み仮名をふらせるなど簡単なテストをしながら進める。正答率はポピさんの方が上だ。「ポピさんは優等生。エラさんはマイペース」。守屋さんは2人の個性が分かってきたという。

2人は昨年夏から半年間の研修で小学3〜4年レベルの日本語を習得したことになっている。いま目指しているのは、年末の日本語3級試験合格だ。3級合格は高校生から大学生レベル。来年は2級に挑むつもりだ。2級は日本語学校に1年通っても簡単に合格はできないが、この水準に達していないと、専門用語の多い国家試験の合格はおぼつかない。

介護福祉士の国家資格は日本人でも合格率50%前後だ。しかし、2人の試験のチャンスは1回限り。落ちれば帰国を強いられる。「まず日本語。国家試験は彼女たちの考えを聞いたうえで短期集中で合格を目指す」と守屋さんはプランを描く。

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守屋さんは光風園ができた93年から働いている。働きながら社会福祉士の資格を取得しており、仕事と勉強の両立がどんなに大変かを熟知している。問題は日本語をどう教えるかだった。ポピさんらの就労・あっせん機関で、介護研修のテキストを作成した国際厚生事業団(JICWELS)は受け入れ施設に参考文献を示し、年1回の報告を求めるだけ。多くは施設任せだ。

守屋さんの試行錯誤が始まった。まず、ボランティアで日本語を教える甲府市の教室を勧めてみたが、2人がいやがったのでやめた。インターネットを使った日本語講座(月額3万2000円)の営業訪問も受けたが、2人がある程度日本語を理解していると分かり、3級合格までは「二人三脚」でいこうと決めた。

インドネシア人候補者の学習環境は赴任した地域で異なる。横浜市は候補者や研修責任者への人件費補助のほか通訳派遣などもあり、支援が手厚い。東京都も1人年100万円まで日本語学校の費用を補助している。だが、こうしたケースはまれだ。

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「今年のフィリピン人の受け入れはやめました」

経済連携協定(EPA)に基づき、今年から2年間で1000人のフィリピン人看護師・介護福祉士候補者も来日することになっている。光風園の熊谷和正理事長は、フィリピン人の介護福祉士候補者の受け入れを考えていた。

しかし、現地で開かれた説明会を見に行ったところ、応募者が5000人以上いたにもかかわらず先着順で機械的に約600人で打ち切り、また応募者のなかには明らかに50歳以上の人もいて「不安になった」という。両国政府の連携が不十分なためだ。

外国人の介護福祉士候補者の受け入れは今年2年目を迎えた。ただこうした外国人候補者を介護人材としてどう本格活用するのか、日本政府はいまだに方針を決めていない。

「(介護福祉士候補者を)国家試験に合格させるつもりがないのではないか」といぶかる施設経営者もいる。先々が見通しにくい異国の空の下、ポピさんとエラさんの生活が続く。

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外国人看護師・介護士/受け入れ低調/資格取得/日本語の壁。(2009/05/10 日本経済新聞 朝刊 5ページ)

日本とフィリピンとの経済連携協定(EPA)に基づき、フィリピン人の看護師と介護福祉士の候補者が10日、来日する。昨年のインドネシアに次いで2カ国目となるが、日本の資格取得へのハードルの高さや足元の雇用環境の悪化が響き、受け入れ人数は計画を大幅に下回る。現場の苦闘から「人材開国」への課題を追った。

東京都八王子市の永生病院。日本人看護師が患者の症状などをインドネシア人の研修生に教える。「分かる?」「はい、わかり、ます」

◇人手不足
同病院は2月から2人のインドネシア人の「看護師の卵」を受け入れた。その1人がデウィ・セプチュアスリニさん(25)。午前中は日本語学校で学び、午後、病院で働く。母国で看護師の経験を積み、高度な技術を学びたいと来日した。いまは患者のおむつ交換などが主な仕事。月給は約17万円。うち5万円を故郷に仕送りしている。

同病院は今後の人材不足も考えて受け入れを決めた。フィリピン人も4人雇う予定。もっとも大半の医療・介護施設は受け入れに慎重な姿勢を崩していない。

日本は2008年7月に発効したインドネシアとのEPAに基づき、2年間で最大1000人の看護師・介護福祉士候補を受け入れる。昨年は208人を受け入れており、今年は残る792人が上限だが、求人は477人にとどまる。フィリピンからは2年間で最大1000人の看護師・介護福祉士候補を受け入れる計画で、初年度は450人が上限。だがこちらも実際に来日するのは約280人にすぎない。

政府は25年に看護分野で最大いまの1.6倍、介護では2.2倍の人材が必要とはじくが、雇用情勢が急激に悪化するなか、失業者を医療、介護分野に就業させる施策が最優先。外国人が働く余地はしぼむ。

政府の支援も手厚いとは言えない。政府助成は渡航費、日本語研修期間の授業料や居住費などに限られている。半年間の研修期間後にかかる費用はすべて受け入れ施設と看護師、介護福祉士候補本人が負担する。

◇先行投資
「日本の労働力人口は減っていく。外国人が戦力になるか見極めたかった」と、インドネシアから5人の看護師候補を受け入れた菊名記念病院(横浜市)。1人につき年75万円を投じるが、こうした先行投資も、候補が国家試験に合格し、実際に日本の看護師資格を得ないと、泡と消えかねない。

看護師候補は3年間に3回、介護福祉士候補は4年間に1回、受験の機会があり、合格できなければ帰国するしかない。来日したインドネシア人の看護師候補は半年間の日本語研修が終わった直後の2月下旬、初めて受験し、結果は全員不合格。残るチャンスは2回。日本語の厚い壁に「せめて漢字にふりがなを」との声もあるが、厚生労働省は「日本語の読み書き能力は必須」と指摘する。

◇「人材開国」戦略欠く、現場は即戦力に期待も
「労働力不足の補てん」ではなく「経済交流」――。政府は医療・介護分野で受け入れる外国人をこう位置付ける。人口が減る国が外国人にどう門戸を開くか。労働市場の長期戦略を詰めないまま、経済連携協定(EPA)の一環として「例外扱い」的に受け入れに踏み出したが、現場の戸惑いは深まっている。

厚生労働省は労働力人口が2030年までに約1070万人減ると試算。高齢者や女性を活用することで新たに600万人の働き手を生むと見込んでいるが、国内だけで必要な労働力を確保できるかどうか意見も分かれるところだ。

今年三月の有効求人倍率をみると、全体が0.52倍まで落ち込む中で介護関連職は1.73倍。医療や介護は「勤務内容が厳しいわりに待遇が良くない」との印象が定着していることもあり、人手不足が解消する気配はない。現場からは、国籍を問わずに「即戦力」を期待する声もある。

世界では高度な技術を持つ人材を中心に獲得競争が激しい。日本総合研究所の藤井英彦調査部長は「生活しやすく、就職・転職しやすい環境を整備しなければ優秀な外国人は定着しない」と指摘する。

雇用情勢が悪化しており、厚労省は在留日系外国人への対応で手いっぱいなのも実情。帰国を望む日系人に旅費を補助するなど、国内雇用の「保護主義」もにじむ。場当たり的な対応に終始するだけでは、未来は描けない。

◇識者コメント、共通ルール必要
井口泰・関西学院大学教授 東アジアでは、看護師など有資格者の労働需給のミスマッチが起きている。看護師は世界的に技能レベルが接近しているので、母国の資格を取得していれば、ほかの国でも資格が取得しやすくなるような仕組みを構築すべきだ。東アジア全体で共通ルール作りを早急に進める必要があろう。

結城康博・淑徳大学准教授 外国人の看護師・介護福祉士候補が日本で資格を取得しやすくするために、特別に英語で出題したり、漢字にふりがなを付けたりする対応は取るべきでない。日本語の意思疎通能力に加えて、読み書きする力も必要だ。受けられる試験の回数を増やす措置を検討すべきだろう。

◇マニラで壮行会、候補者「粘り強く責務」
マニラ首都圏のケソン市で、渡日するフィリピン人の看護師と介護福祉士候補者の壮行会が開かれ、候補者を代表して介護福祉士を目指すセルルン・ダホセさん(34)が「粘り強く責務を果たす」とあいさつした。比政府の代表も「日本人への重要な貢献になる」と激励した。

候補者は一定の日本語能力があると判断された者を除き、東京や大阪などで6カ月間の日本語研修を受ける。その後、全国の134の病院・施設に散らばり、国家試験合格を目指す。ある男性看護師候補者(27)は「日本語で試験に合格するのは難しいが、日本人と同等の待遇が得られるよう努力したい」と語った。

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日本・インドネシアEPA/八戸の研修者が帰国/インドネシア人看護師候補体調不良 (2009/05/13 河北新報朝刊)

◇途中帰国は初
日本とインドネシアとの経済連携協定(EPA)に基づき、日本の看護師資格取得 のため八戸市のシルバー病院で研修していたインドネシア人看護師候補者が、体調不良を理由に帰国したことが12日、分かった。厚生労働省によると、日本で研修中の看護師と介護福祉士のインドネシア人候補208人のうち、途中帰国は初めてという。

病院によると、帰国したのは26歳の女性看護師候補者。もう一人の候補者とともに、2月から病棟での看護補助研修を受けていた。今月9日に帰国した。

女性は当初から「寒さで眠れない」などと話し、寒冷性のアレルギーとみられる発疹(はっしん)や頭痛などの症状を訴えていたという。病院は4月下旬に女性から相談を受け、本人の意向を確認して帰国を決めた。

病院は「言葉の壁や気候・文化の違いなどストレスもあったのだろう。帰国は残念だが、早く体調を回復してほしい」と話している。

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社説/ケア開国/場当たりではダメだ(2009/05/16 毎日新聞 朝刊 5ページ)

外国人の看護、介護労働者受け入れをめぐって、国内が揺れている。

日本とフィリピンの経済連携協定(EPA)に基づき、フィリピン人看護師、介護福祉士の候補者が来日したが、受け入れ人数は計画をかなり下回った。日本での資格取得が難しいことに加え、昨年秋からの不況で日本人の失業者を医療、介護分野で受け入れるための施策が始まり、受け入れ施設が慎重になっているためだ。

外国人の看護、介護労働者の受け入れは昨年のインドネシアに続いて2国目となる。「ケア開国」は始まったばかりだが、早くも課題が表面化してきた。

フィリピン人の看護師、介護福祉士の受け入れはインドネシア人と同規模で、2年間に最大1000人の計画だ。半年間、日本語と看護・介護の導入研修を行った後、現場で働く。研修の期間は看護師が上限3年、介護士は同4年、日本語で国家試験を受けて合格すれば日本で働けるが、不合格者は帰国させられる。

来日の希望者は多くいたが、今回低調だった背景には、さまざまな問題がある。第一は日本語で国家試験を受けることなど資格取得のハードルが高いことだ。例えば介護福祉士の資格は日本人でも合格率は50%前後と難しく、日本語の習得が大きな壁 になっている。

次に受け入れ施設側の負担の問題だ。渡航費や来日後、半年間の日本語研修費は日本政府が支給するが、その後の研修費用と賃金は受け入れ施設の負担となる。「試験に合格して働いてもらわなければ、先行投資が無駄になる」と受け入れに積極的になれないのだ。

三つ目、これが一番の問題なのだが、政府の外国人労働者政策が定まっていないことだ。今回の受け入れは経済交流の一環であり、政府は労働力不足対策ではないとしている。将来、経済交流がどうなるのかについては明確になっておらず、これが医療機関や介護施設を慎重にさせている。

政府の試算では、高齢化が進む中、2025年には現在の約2倍の介護職員が必要になる。毎年7万〜8万人の増員が必要なのだが、人材確保の見通しは厳しい。外国人労働力をどのくらいの規模で、どういう形で受け入れるかという問題に答えを出すべき時期に来ているのだが、本格的な議論は始まっていない。

場当たり的な政策を続けていけば、やがて立ち往生する。まずは外国人の看護、介護分野への受け入れについて基本方針を固め、その上で、問題が表面化している受け入れの高いハードルの課題などについても対応を取るべきだ。

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看護介護全国ニュース(BERITA PERAWATAN)2017年 1月〜11月号

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